危険な誘惑にくちづけを
 わたしが、佐倉君と離れたがっているのを察してくれた薫ちゃんが。

「女の子二人の留守番に。
 何の関係もない、男の子の佐倉ちゃんが混ざるの?」

 って言った挙句。

 駅へ向かう、自分と一緒に。

 関係はある~~と。

 ずーーっと言っていた、佐倉君の首根っこを捕まえて連れ出してくれたおかげで。

 今、この部屋にはスィンちゃんと、わたしの二人きりしかいなかった。

 後でしっかり薫ちゃんに佐倉君のコトも話さなくちゃいけないし。

 一緒にいる子がどう見ても、男の子に見える、初対面の外人さんだし。

 それに、何よりも。

 紫音の行方が気にかかって、仕方がなかったけれども。

 居ることになった、スィンちゃんが。

 気さくに、にこっと笑ってくれるところがとても助かっていた。

 ただ。

 出会ってから今まで、笑顔は見せてくれても。

 わたしに、一言もしゃべってはくれなかった。

 ……日本語でしゃべるのが、難しいのかな?

 発音とかに自信がないのかな?

 それとも。

 あんまり、そう見えないけれども。

 スィンちゃん自身も、この状況にだいぶ緊張しているのかな?



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