危険な誘惑にくちづけを
 なにしろ。

 はじめて来た日本の、初対面の外国人の家に。

 一緒に来た薫ちゃんと離れて、一人、なんだもんね?

 わたしだったら、絶対スィンちゃんみたいに笑えない。

 きっと、泣きそうな顔をして、どきどきしてる。

 だけども。

 本当は、わたしよりも二つ年上だっていうスインちゃんは。

 特に困った様子は見られなかった。

 すごいなぁ。

 そして、何だかカッコいいなぁ。

 なんて、感心して見ていると。

 珍しそうにわたしの部屋を見回していたスインちゃんは。

 鏡の前に置いてある、お化粧品とアクセサリーに目を留めたみたいだった。

 何か、気にして、ちらちら見てる。

 男の子そっくりに見える今は、ルージュ一つ引いてないけど、本当は、お化粧に興味あるのかな?

 ううん。

 女の子なら、あるはず、だよね?

 よく見れば。

 スインちゃんの肌、とてもキレイだし。

 顔の作りだって整ってる。

 薫ちゃんが、いつ連絡して来てくれるのかも判らないし。

 ただぼぅっと、待っているのも。

 余計はことを考えそうで嫌だったから。

 わたし、スインちゃんに勧めてみちゃった。

「……お化粧、やってみる?
 今年流行りの色のグロスとかも、あるけどーーー?」





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