危険な誘惑にくちづけを
 紫音が、どこで何をしているのか判らず。不安だった。

 ココロが動かないなら、カラダを奪ってやる、と宣言した佐倉君のコトが怖かった。

 一度、涙があふれると、後から後から涙が出て。

 止まらな……い。

 スィンちゃんの前では、そんなにめそめそする気はなかったのに……

 何か。

 ココロのどっかが壊れたみたいに、涙が、止まらない。

「ごめん……ね?
 せっかく初めて日本に来たのに。
 薫ちゃんと、楽しく遊びに来たのに。
 ヘンなコトに巻き込んじゃって……」

 涙をぽたぽた流してうつむく、わたしの頭を、スィンちゃんはそっと抱きしめてくれた。

「……大丈夫や。
 大丈夫。
 春陽ちゃんも、色々で大変そうやけど……。
 クニに居るときな。
 あの阿呆から、紫音ちゃんのこと、聞いててん。
 外見はチャラィかもしれへんけど。
 ちょっとやそっとじゃ、好きになった女の子、裏切るヤツやないって」

 ……知ってる。

 紫音は、半端なキモチでは、裏切らない。

 だから。

 だから。

 紫音が裏切った時は……

 ……わたしと、本当にさよなら、を決めた、時だ。

 

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