危険な誘惑にくちづけを
「薬がこんな恐ろしいモノだったなんて。
 昔の俺は知らなかったし。
 看護師の学校で授業は受けていたけどな……
 ……紫音さん見て、心から実感したぜ」

「加藤先輩……」

「一応、カルテには、軽い記憶障害って書いてあるけど、見ている限りでは、もっと辛そうだ。
 薬をやっていた時に、記憶が戻って、そこから抜け出せなくなっているみたいなんだぜ?」

 ……しかも、最悪な時の事ばかり思い出しているみたいだ、と、加藤先輩は、困ったように腕を組んだ。

「それに、ホストやってる時は。
 紫音さんが、本当のオーナーだし、あの性格だから。
 年上のオカマを上手く使って、紫音さん自身が主導権を握っているもんだと思ってたけれど……
 ……本当は違うんじゃないかって思った」

「……え?
 それは、どういうこと?」

 意外な加藤先輩の言葉に、わたしは思わず、聞いた。

「それって、もしかして。
 紫音と、薫ちゃんの関係が、今までわたしが知ってる通りじゃないって……こと?」

 加藤先輩の言っていることが、よく判らない。

 混乱しているわたしに、先輩は『ああ』とうなづいた。

 
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