危険な誘惑にくちづけを
戻ってきたヒビ
「春陽ちゃんに、都合の悪いものは、全部消させてもらったよ」って。
佐倉君は、言っていたけれども。
それが、本当なのか、それとも嘘なのか。
わたしが知ることは、できない。
けれども。
紫音が病院にいたことが判ったあの日から。
佐倉君はいつもの佐倉君に戻った。
……って言うか。
よくよく考えてみたら。
怖い。
そして、わたしに無理なコトを要求する姿を、佐倉君が見せたのは、ほんの数日だったのに。
ずいぶん、長い悪夢を見ていたような気がする。
相変わらず、水島にげしげしとやっつけられ、それでも機嫌良く笑っている佐倉君を見て。
わたしは、思わずため息をついた。
「最近、春陽はノリ悪いねぇ~
……ほとんど、最悪って言うぐらい」
頬杖ついたわたしの手を、水島は、ぷにぷに押しながら言った。
「ねぇ、そんなに憂うつなら、合コンでもやって、ぱあっと、憂さ晴らししない?」
そんな風に、簡単に言う佐倉君にわたしと水島は睨んだ。
「「ぜったい、結構、よっ!」」
もう、佐倉君の主宰する合コンなんて、絶対行かないかだから……!
そう、思うわたしの思いは、どうやら水島と一緒のようだった。