危険な誘惑にくちづけを
Ⅱ章

ライバルなヒトビト

 

 うふふふ。

 にこ。

 えへへへ。


 紫音が日本にいる日は。

 ものすごく、ミもココロも軽い。

 何が起きても、へっちゃら。

 大丈夫、な感じがして、幸せ。

 だから、例え。

 わたしの大嫌いなデザイン・デコレーションの授業中だって、ね。

 今日は。

 花瓶に山盛りになっている花を、デッサンしてる。

 いずれ、この花々を。

 クリームやアメでスィーツの上に表現するための、基本なんだそうだ。

 いい年して、お絵かき、なんて。

 いつもは、憂鬱になる授業も、今日は、幸せ。

 スケッチ・ブックを抱えて、にへにへ笑っていたら。

 隣に座っているスタイリッシュな、ショートボブの女の子に、指を差された。

「不気味」

 なんて。

 今、わたしが通う。

 この製菓学校の中で一番仲のイイ子の。

 水島 桃花(みずしま ももか)に。

 あっさり、ぱしっと切り捨てられたのに。

 わたし、今。

 幸せパワーでちっとも腹が立たないの~~。

 えへへ~~

 ごめんね☆
 
「は……春陽が壊れた」

 壊れてないもん!



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