危険な誘惑にくちづけを
「ウソって言うよりは、さ。
 この学校の入学式からずーーっと。
 春陽にアタックし続けてる、迷惑な莫迦がいるじゃない。
 そいつ避けに、話を作ってたのかなって、思ってたの」
 
 迷惑な、莫迦!

 水島の言い方は、あんまりだったけれど。

 確かに、その。

 ちょっと、困った人は……いる。

「佐倉 大樹(さくら だいき)……君のこと?」

 わたしが、小声で言うと。

 水島は、うん、とうなづいて。

 その佐倉君をチラ見した。

 少し、鼻が大きめで。

 身長なんかは、紫音よりもだいぶ低いけれど。

 それでも、十分。

 わたしより、拳一つは背が高く、何よりも。

 目もとが涼しく、切れ長の和風美男子って感じだ。

 そして。

 その瞳は、紫音や薫ちゃんみたいに。

 いざとなったら戦えるヒトらしく。

 時折、強い光を放ってた。

 紫音が、ライオンや、トラみたいな。

 大型のネコ科の獣王の雰囲気を持っているならば。

 さながら。

 佐倉君は、シャープな狼だった。











 ……ただし。

 黙っておとなしくしていれば。

< 23 / 148 >

この作品をシェア

pagetop