危険な誘惑にくちづけを
「……いつも……
 一人にさせて……すまない……」

 遠い、異国で、一人。

 本当は、紫音の方が、ずっと。

 寂しいのかもしれない。

 紫音は、日本に帰ってくるたび。

 手や髪や、なんか。

 わたしのどこかに、触れていたがった。

 切ないほどに、狂おしく。

 わたしのカラダをずっと、抱きしめていたがった。

 わたしと出会う前までは。

 昼間は、私立とはいえ、学校の先生をしながら。

 夜は、街一番のホストとして。

 たくさんの女のヒトの間を、飛びまわっていたコトを知っていたから。

 今、紫音が、わたしだけを。

 そんなに一途に思ってくれていることが。

 とっても。

 とっても、嬉しかった。

< 3 / 148 >

この作品をシェア

pagetop