危険な誘惑にくちづけを
「やっぱり、わたし、ココ好き」

 アメ細工とクリームで出来た、繊細なバラとユリの飾りに。

 わたしは、ココロから、ため息をついた。

 自分の絵とは、まったく比べ物になんて、ならない。

「前に、一度実習で来たことがあるけど。
 また学期末。
 気に入った店に、入れるじゃない。
 その時は、絶対ココを希望するつもりなんだ」

 紫音の推薦する店だし、ね。

「そうね。
 あたしも、好きよ?
 ここ、競争率きっと高いと思うケド……
 願いが叶うといいわね?」

 わたしのつぶやく声を聞いて、水島は、明るく笑った。

 と、そのとき。

 ショウ・ウィンドの向こう、厨房の方から。

 穏やかで、のんびりした声が聞こえた。

「おや~~
 製菓学校の生徒さんたちじゃないですか~~?」

 見上げれば、そこに。

 両手にケーキの乗ったトレイを抱えたヒトが。

 いつも、ガッコの調理室にいるときと変わらない。

 にこにこと機嫌の良さそうな顔をして、立っていた。

「「風ノ塚先生!」」

 思わずハモった、わたしと水島の声に。

 風ノ塚先生は、またにこっと笑って、何の気負いもなく、気軽にアタマをさげた。

 
 
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