危険な誘惑にくちづけを
 

 あ……っ!

 もう!


 紫音が、ささやくたび。

 吐息が、わたしのクビを撫でて、カラダが、熱をおびて来ちゃうじゃない!

 期待を込めて、どきどきと高鳴る心臓の音を、紫音に聞かれそうで。

 わたしは、とても……恥ずかしかった。

「……紫音!」

「……ここでだって、あまり長く待つ気はない……」

 さあ、早く、と紫音に促され。

 震える手に、スポンジを持ちなおすと。

 わたしは、気を取り直して、お皿洗いを続けた。


 かちゃ……かちゃ

 ごし……ごし


 さっきよりも、明らかに、手が遅くなる……のは、仕方ないよね?

 だけども。

 待ちきれなくなったらしい、紫音は。

 わたしの、うなじにくちづけた。
 
「あ……
 ちょっ……
 ダメ、だって……」

 もう、おかたずけになんて、ならないよ……っ!

 手が止まるわたしに、薄くほほ笑んだらしい。

 ふふふっと、耳元で、軽く吐息をついて、紫音はまた、ささやいた。

「……なんで、春陽は。
 ヤツらを連れて来たんだ?」

 どきん。

 突然言われて、心臓が、跳ねる。

 水島と……佐倉君の、コト?
 
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