危険な誘惑にくちづけを
 
 佐倉君が、紫音なんているはずないって。

 わたしに、ちゃんとした彼氏がいるなんて、認めてなかったから、なんて。

 ホントのコトが、言えるわけもなく。

 わたしは、やあね、と紫音に笑った。
 
「……二人とも、ガッコの友達だから」

「本当に……
 春陽の、大事な、友達か?」

 一言、一言。

 区切るように、確認する紫音に。

 わたしは「そうよ?」と答えた。

 ……友達ってことは、ウソじゃない。

 わたしの言葉に、紫音は、ため息をついた。

「本当は。
 ……こんなことを……言いたくないんだが……」

 珍しく、言い淀む紫音に。

 わたしは、お皿をかたづけるのを完全にやめた。

 そして。

 軽くわたしを抱きしめる紫音の腕の中で、くるり、と振り返る。

「なあに?」

 わたしと、直接顔を合わせた紫音は。

 困ったような顔をして、軽く目を伏せた。

「春陽は……
 ……あまり、あのガキの……
 佐倉の近くに、いないで欲しいんだ」

「……え?」

 紫音の言葉に、わたしは、聞き返した。

「えっと……それは、どう言う……?」
 
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