危険な誘惑にくちづけを
「紫音……」

 行かないで、と言えるモノなら、言いたかった。

 久しぶりに会った、紫音との大切な時間を。

 こんな風に、潰してしまいたくはなかった。

 だけども、紫音の背中が、わたしを……全部を拒否しているようで、声をかけることなんて、できなかった。



 キィ……ぱた、なんて。

 紫音の出ていく音が。 

 普段気にも留めない、自分の部屋の扉が閉まる音が。

 ずしん、と、わたしのココロに響く。

 紫音を追いかけて行こうにも。

 急にあふれ出て来た涙で、前なんて見えなかった。

 紫音……なんで?

 悲しいよ。





 ……寂しいよ……!





 
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