危険な誘惑にくちづけを
「もう~~
 信じられない~~」

 これから、用もあるからって、帰らないでいた水島に、声をかけられて。

 思わず、涙が出て来た。

「相当怒ったのかもしれないけど、何にも言わないで、出て行くことないと思わない!?」

 しかも、次に日本に来る日も教えないで、行っちゃうなんて!

 信じらんないほど、ありえない!

 午前中は、ずっと悲しくて。

 しくしく泣いていただけだけど。

 今となっては、なにやら、とっても、腹が立つ!

 わたしは、涙をごしごし拭いて言った。

「もう~~
 紫音なんて、知らない!」

 そんな、わたしの様子を見て。

 水島が、申し訳なさそうな顔をして、上目使いになった。

「……ごめんね?
 もしかしなくても……あたしたちが、春陽の部屋に、押し掛けたせいだよね?」

「……確かに、まったく関係ないとは、言わないけどさ。
 でも、イヤなことがあったら。
 話し会ったり、謝らないとお互いのこと判らないし。
 また、同じことでケンカになるじゃない?
 アタマを冷やすために、ちょっと外に出るならともかく。
 一晩中、居なくなってたら、話しにならないじゃないの!」

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