砂に書いたアイラブユー
が来始める。


 本職の作家なら、誰もが憧れる原稿の依頼というやつだ。


 そして僕はそれから夜勤のバイトを辞め、執筆に専念することにした。
 

 幸い、環境は整っている。


 今の部屋にいてもいいし、奈々が卒業後に海外留学して日本に帰ってくるまで待っていればいいからだ。


 僕は決して自分のペースとは行かなかったが、毎日三十枚から四十枚ぐらいはコンスタントに書き続けていた。


 普通の作家だったらこれぐらい当たり前なのである。


 その代わり、出版社も土日は休みなので、週末は奈々と一緒にいられた。


 その時間が何よりも楽しみで、大切だと心から思える。


 僕はかなりのリターンのある創作をしながら、いずれは奈々と送るであろう新生活を夢見ていた。


 いずれ留学して帰国すれば、東都大か京阪大ぐらいのレベルの大学院に残り、研究職を目指すであろう彼女との新生活を。
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