砂に書いたアイラブユー
 僕の文芸への入れ込みようは半端じゃない。
 

 僕はその日、自宅マンションに帰り着くと、すでに手を付けていた原稿を書き進める作業に追われた。


 こうして会えない一年間が始まる。


 互いに遠距離恋愛で。


 だが、僕は奈々に予(あらかじ)め言っていた。


「パソコンのフリーのメールボックスに毎晩メールするから、必ず一日に一回は開いてね」と。


 僕たちの愛情は変わらなかった。


 同じ空の下で生きている以上、また会えるのだから……。


 僕も奈々もそこら辺りの事情は弁(わきま)えていた。


 お互いライフワークを見つけられたのだし、夢を追いかけるのに若すぎることはない。


 僕たちは互いにメールのやり取りをしながら、近況を欠かさず報告し合っていた。


 奈々は現地に着いてすぐに、憧れていたロンドンで文学の勉強を始めていたし、僕も新
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