砂に書いたアイラブユー
「ああ。執筆の方はお陰様ではかどってるよ」

 
 ――でも疲れてるでしょ?専業になったのはいいにしても。


「うん。でもどうだろ……俺もやっと作家業が板に付いてきたかなって思う。筆歴は浅いんだけどな」


 ――連載が載ってる雑誌とか、リリースした単行本、通販で買って読んでるわよ。


「ああ、ありがとう」


 僕は奈々が変わらずに自分の愛読者であることを悟り、嬉しい気持ちになった。


「留学生活は楽しい?」


 ――うん、まあね。でも、全く知らない人たちの中に溶け込むのが難しいから、あたし疲れちゃってる。


「大丈夫だよ。しばらくの辛抱だって思うし、君だったら、こっちに帰ってきてからもちゃんと生活していけるだろうって思うから」


 ――そうね。また会える日まで頑張ろうね。


「ああ。お互い頑張ろう」

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