砂に書いたアイラブユー
 ――声聞けただけでも安心してる。


「俺もだよ」


 電話越しに互いに苦笑してしまう。


 かなりの遠距離にある国際電話でも、雑音はほとんど入ってない。


 まるで近所から掛けているように、クリアに聞こえる。 


 それだけ二〇一一年ともなれば電話機の技術も格段によくなっているのだ。


 そして僕たちは電話越しにしばし歓談し合った。


 イギリスと日本はちょうど九時間の時差があり、奈々が午後九時ぐらいに掛けてきていたので、僕は朝の六時に電話に出ていたことになる。


 電話でメールじゃ伝えきれない近況や想いを届け合って、電話を切った。


 辺りはシーンと静まり返っている。


 僕はちょうどいつも起きている時間帯だったので、軽く食事を取り、洗面を済ませた。


 いつの間にか、奈々がいないことで起きる寂しさは消えていた。

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