砂に書いたアイラブユー
 僕の傍らには奈々が歩いていて、五百ミリリットル入りの真水を入れ、持ってきていた。


 この町のアパートやマンションはまだ井戸水のところが多い。


 当然冷たくて、飲むととても刺激的だ。


 水分が補給されれば、また気持ちが切り替わる。


 奈々が立ち止まって、ペットボトルのキャップを捻り、呷り始めた。


 ゴクゴク……。


 女性の喉が静かに鳴る。


 男性ほどじゃないぐらい。


 そして奈々が栓をし、歩いてビーチパラソルの下に辿り着くと、その場にいた僕に、


「海綺麗だから、また泳ごうよ」


 と言って、砂浜に向け走り出す。


 僕が追いかけていって、海中へと入っていく。


 大学生なので、僕たちはみっともない真似はしなかった。
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