砂に書いたアイラブユー
 それにいつも想っている。


 あの奈々の眩しいばかりの笑顔を。


 そして僕と彼女は遠距離で連絡を取り合いながら、交際が続いていた。


 一年生の春に出会ったのだから、もう足掛け五年目になる。


 僕たちは互いにすっかり大人になっていた。


 奈々は将来学者になりたいのだろうし、僕はそんな彼女を支えられるだけの物心両面の力がある。


 決して離れないし、離しやしない――、そう念じるように思っていて……。


 あっという間に奈々の留学期間は過ぎ、翌年二〇一二年の春先に彼女は帰国した。


 向こうの大学でも成績はよかったのだが、彼女はあえて四年間在籍した母校の大学院に進学するつもりでいるようだ。


 首都圏の大学の院を選ばずに……。


 そして奈々はまた町に帰ってきた。


 一年ぶりの町に彼女は当惑しているようだ。
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