砂に書いたアイラブユー
「じゃあ行きましょ」


「ああ」


 僕たちは頷き合い、互いにペダルに足を置く。


 そして漕ぎ始めた。


 自転車同士が併走し、僕たちはあの懐かしい海へと向かう。


“青い海はまだ変わってないだろうな”


 僕はそう思いながら自転車を漕ぎ続ける。


 奈々も嬉しそうな顔をしていた。


 すでに作家として独り立ちしていた僕と一緒になるのが決まっていたからだ。


 大きな雲が青い空に浮かんでいて、緑を付けた木々が映えている。


 とても美しい場所にまで来ていた。


 やがて前方に海が見える。


 やはり変わっていなかった。
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