砂に書いたアイラブユー
 奈々の唇にはいかにも大人の女性らしく、グロスがたっぷりと塗ってある。


 僕はいとおしみを感じながら、繰り返しキスして抱いた。


 柔らかく、しかも仄(ほの)かに熱を帯びていた体が徐々に火照り出す。


 夢中で抱きしめて、互いに呼吸が止まるかと思うほど口付けを繰り返した後、僕が、


「やっと二人でいられる時間が来たね」


 と言った。


「ええ。とっても待ち遠しかった」


 奈々がそう言い、僕に抱きついてくる。


 互いの体の熱を感じ取りながら、僕たちは抱き合い続けた。


 春の太陽がまるで僕と奈々の間に生まれた絆を表徴(ひょうちょう)してくれるように、大きな空の彼方にある。


 僕たちはその日存分に海を楽しみ、三日後に町役場に行き、正式に籍を入れた。


 僕と奈々は晴れて一緒になれたわけだ。

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