砂に書いたアイラブユー
第6章
     6
「ノーメイクでもいいんじゃない?」


「そう。あたし一応一通りメイクするんだけど」


「スッピンでも十分可愛いよ」


「嬉しいこと言ってくれるじゃない」


 奈々が頷き、食事を取り続ける。


 横顔には笑顔が浮かんでいた。


 僕も目の前で食事を取りながら、彼女に対し、愛想を振りまく。


 二人での食事が終わったのは取り始めてから三十分後だった。


 僕が奈々の皿洗いを手伝いながら、二人で並んで流しに立つ。
 

 キッチンには洗剤のライムの香りが漂っていて、僕は鼻がくすぐられるような感じだった。


 奈々も応じ、僕たちはしばらくの間、キッチンで分担して皿を洗う。


 それから各々洗面台に備え付けてある歯ブラシを手に取り、歯磨き粉のチューブを捻っ
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