砂に書いたアイラブユー
て、ブラシの先端に塗りつける。
 

 歯を磨きながら、僕たちは互いの顔を見合った。


 僕は寝起きとあってか脂や汗が浮き出ていたし、奈々も歯磨きが終わってから、洗顔フォームで顔を洗う。


 各々皮脂(ひし)を取り、僕は奈々からタオルを借りて、顔を拭いた。


 彼女もこれからメイクするようで、キッチンにある鏡台へと向かう。


 僕はホントなら整髪剤を付けたかったのだが、海から帰った途中で何も持ってきていない。


 仕方がないので、スタイリングを諦め、髭も伸ばしっぱなしにして、自室に帰る旨告げた。


 奈々に見送られて部屋を出、僕は歩き始める。


 すぐ近くに住んでいるので、自転車に跨って行けた。


 僕はペダルに足を置いて漕ぎながら、思わず日差しの暑さで照り返されるのを感じている。


 やや早めに走って、十分ほどが経ってから、僕は自宅マンションに帰り着いた。
< 27 / 119 >

この作品をシェア

pagetop