砂に書いたアイラブユー
 カツカツカツ……。


 キータッチ音が辺りに鳴り響く。


 僕は文学部に在籍していたので、期末とか期の頭に頻繁にレポートを提出させられる。


 しかもおよそ教授や准教授など、指導する人間が読まない類の代物を。


 確かに文学や文芸は面白いし、のめり込めば嵌まるのだが、僕はあくまで今の時点では読み手に徹しようと思っていた。


 だが、欲というのは実に恐ろしいものである。


 僕は大学に入ってから一年間のブランクを経て、小説のようなものを書き始めた。


 パソコンの画面を開いて、文字を打ち込んでいく作業が、僕にとって半分趣味のようになりつつある。


 僕自身、まさか自分がモノを書く作家になるなどとは、そのとき思いもせずに。


 そして僕は完成した原稿を一話ずつ切り取って、持っていたブログにアップし始めた。


 単なる趣味で、しかも最初は原稿を打つスピードが遅かった僕が慣れ始めて、キーを叩くことが苦にならないようになったのはその年の八月終わりのことで、僕は一気に原稿を仕上げる。

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