砂に書いたアイラブユー
 僕たちは若さに任せて、頼んでいたコーヒー一杯で丸々一時間話し続ける。
 

 それだけまだまだ若かったのだ。
 

 今も若いのだが、あの頃と比べると、互いに成熟度が増したと思っていた。


 僕が履いていたサンダルを手に取り、夏の海に浸かりながら、奈々と戯(たわむ)れる。


 海辺は夏休みも中盤ぐらいなので、ひっそりとしていた。


 目立った人影はない。


 そして僕と奈々は抱き合い続けた。


 海に浸かって、互いに穿いていたジーンズを濡らしながら……。


 僕たちは打ち寄せる波に夏を感じていた。


 白雲の彼方に色鮮やかな水平線があるのが見えていて。


 僕も奈々も、はしゃぎ疲れてしまうと海辺に寝そべり、荒かった呼吸を整える。


 ほんの数組いるカップル――稀に子連れもいたのだが――が、水飛沫(みずしぶき)を上げてはしゃぎ続けているが、騒々(そうぞう)しさはない。

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