砂に書いたアイラブユー
 僕が頷き、二百五十枚の原稿を書き終えた反動で、思わず息をつく。


 奈々は今日も大学の図書館に行くらしい。


 連日、かなり勉強しているようだ。


 僕はそんな彼女を陰ながら応援し続けていた。


 互いに進む道は決まったわけだ。


 大学という場で知り合ってから、二年とちょっとが経ってから。


 そして僕は奈々の部屋を出、自宅マンションに向けて歩き出す。


 ほんの一ヶ月前の暑さがまるでウソのように、冷たい風が吹き付けている。


 僕は歩きながら考えていた。


「公募ガイド、また買わないとな」と。


 確かにインターネット経由でも、いろんな賞の応募要項が分かるのだが、僕はなるだけ紙に印刷されたガイドの方を好んで使っていた。


 詳しいことはそっちに全て書いてあるからだ。
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