砂に書いたアイラブユー
 確かに苦かった。


 砂糖とミルクなしのブラックで飲んでいたので、どこかしら物足りない。


 だが、コーヒーを一杯飲めるだけで眠気が吹き飛ぶ。


 そして僕は思っていた。


「また奈々を抱きたい、抱きしめたい」と。


 頭の中で彼女が出てくるたびにそう思う。


 僕と奈々はたとえ離れてはいても、同じ太陽の下にいて、絶えず呼吸しているのだから……。


 おまけに会ったときに交わすキスの味や、唇表面の感触は全く変わらないのだから……。


 奈々の唇は潤っていて、グロスなどを付けなくてもいいのだし、僕は実際のところノーメイクでも構わないとすら思っていた。


 僕はいつも思い続けている。


「しばらくは会えないかもしれないけど、ちゃんと恋をしているんだな」と。


「愛情は続いているんだな」と。
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