砂に書いたアイラブユー
 そういった感情を反芻(はんすう)しながら、僕は毎日を送り続けていた。


 夜勤のバイトはきついのだが、これがあるからこそ、今こうしてこの町にいられる。


 たとえ、卒業を諦めて中退するにしても、僕はこの町に住み、奈々との愛を育むつもりでいた。


 またあの海に行き、砂浜に押し寄せる波を掻(か)い潜(くぐ)って、ビーチに<アイラブユー>の字を書ける日が来るのを待ち続けながら……。


 来年の夏じゃなくても、今年の秋か冬の初め頃でもいいのだった。


 ビーチは人が少ないだけで、寄せては返す波を二人で揃って眺め続けられれば、それで済むのだから……。


 そしてまた交わしたいと思っていた。


 誰よりも愛おしいと思える人との、甘い甘い蜜のような口付けを……。


 秋の夜は長い。


 これからは段々と日が短くなる。


 十二月の冬至の日まで。

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