砂に書いたアイラブユー
 石鹸の香りのデオドラントが辺り一帯に優しく漂い出す。


 僕自身、気持ち的にまだまだ若い。


 これから先、いくらでも可能性があるのだ。


 確かに大学にはほとんど行かなくなったし、中退する覚悟が出来ていたので、躊躇いがない。


 それに小説家の卵としてこれから執筆を続けていく際に、いろんなことがあるだろう。


 ただ、僕はそういったことを一々全部気に留めていたら、キリがないと思っていた。


 だから、ある程度方向性が決まれば、後は突き進んでいくだけだと思っていたし、実際そうしようと考えていたのだ。


 そして僕は夜勤明けに会社がテナントとして入った建物を出た。


 これから自宅へと向かう。


 僕は奈々のケータイにメールを打つ。


 午前五時過ぎの秋空は寒い。


 カツカツカツ……。
< 72 / 119 >

この作品をシェア

pagetop