砂に書いたアイラブユー
 秋の日が地平線から昇って、中空で鈍い光を解き放つ昼の時間帯に僕は目覚める。


 奈々からメールが来ていた。


 新着メールには<おはよう、駿一>とタイトルが打ってあり、僕は普通の人と逆転した生活を送っていることを改めて実感する。


 夜勤は昼夜逆転になりやすい。


 僕が起きる時間は、奈々にとって図書館に通い詰めてから、カフェでお昼ご飯を食べている時間帯なのだ。


 メールを見て起き上がった僕がキッチンに向け歩き出す。


 今からコーヒーを淹れるためである。


 朝一のコーヒーも結構美味しい。


 夜勤の最中に坂上から淹れてもらう、強烈に苦い代物とはまるで違い……。


 そしてコーヒーを丸々一杯に、牛乳や野菜ジュースなど、栄養がぎっしりと詰まったものを飲むと、一日が始まるのだ。


 僕はマイペースで身支度を整え、パソコンのドキュメントの画面を開いて、原稿の続きを執筆し始める。
< 74 / 119 >

この作品をシェア

pagetop