砂に書いたアイラブユー
 東大だの、また私立で言えば早稲田だの慶應だの、そういった超一流大学だけを学校としてしか見ていない人間が少なくない。
 

 それに僕や奈々が通っている大学はそういった難関校じゃなくて、地方にある無名の大学だ。


 いったん社会に出れば、学歴などは一切関係なくなる。


 要はその人間が学生時代にどんなことを勉強してきたかに比重が移ってしまう。


 僕は自分が文学部に在籍していながらも、自分のしている研究が合わないと思い、大学を辞めて小説家になる道を選んだのだ。


 確かに作家は大変な職業である。


 売れるか売れないかというより、食べていけるかいけないかの方が心配だった。


 新人賞受賞、即プロデビューじゃないのである。


 大概の新人は文芸雑誌などに連載を持ちながら、その原稿料で食べているのが現状で、本が売れない時代は続いていた。


 書籍の印税だけで食べている作家などほんの一握りだろうと思われる。


 そして僕は厳しいとは分かっていながらも、あえて新人賞を獲り、先輩作家たちから認
< 77 / 119 >

この作品をシェア

pagetop