砂に書いたアイラブユー
めてもらってから文壇という場所に足を踏み入れる気でいた。
 

 まあ、文壇という言葉も死語になりつつある時代だが……。
 

 来年一月中旬締め切りの日本ミステリーノベル大賞は、そんな僕にとって試金石の一つとも言えた。


 ここで何かしら反応があれば、締めたものだからである。


 一気に流れが変わる。


 自分に原稿の執筆依頼が来ることも十分考えられた。


 それに新人賞は一つや二つ獲っておいて、損はないのだ。


 逆に一切賞を受賞しないで文芸界に入っていくのは困難だと思われる。


 だから欲しいのだ。


 普段から無欲な僕も、この新人賞に賭けてみようと思っていた。


 おそらく日本の文芸の新人賞では一番レベルが高いものだから、波及効果は絶大だと思われる。


 そして僕は結果が出る来年七月が楽しみだった。
< 78 / 119 >

この作品をシェア

pagetop