砂に書いたアイラブユー
 当然、互いに成熟した人間同士だから、結婚ということも考えられた。


 もちろん同棲でもいいのだが……。


 僕は今から楽しみだった。


 奈々との将来がどうなっていくのかを……。


 それに自分たちの描く未来図がどうなっていくのかを……。


 僕は淡々と原稿を打ち続けた。


 昼過ぎに起き出して洗面し、髭まで剃って、気付けのコーヒーを飲んでから。


 時間はいくらでもある。


 大学中退が確定した人間にとっては。


 そしてこっちの方の選択が正しいことが後々証明される。


 僕が大学を中退した身で、あの、かなりレベルが高い、ミステリーでも最高峰とでも言うべき日本ミステリーノベル大賞で栄(は)えある特別賞を受賞してしまうことで……。


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