砂に書いたアイラブユー
 一つは奈々としばらくは別れざるを得ないことである。


 その間、僕と彼女が日本と海外という超国際遠距離恋愛で続くのか……?


 そして自分が文芸賞を獲り、本職の作家になれるのかどうか……?


 いろんなことが積み重なって、僕の心労は大きくなっていた。


 ただ、どことなく確信はあったのだ。


 僕の作品が賞のかなり上まで行けることを。


 それに僕自身、落選した場合に備えて、次の作品を書いていた。


 <スイートデイズ>という甘くも切ない恋愛小説である。


 これは離れている主人公とヒロインが、遠距離恋愛しながら最後は結ばれるという、話の切り口としてはよくあるパターンの小説だった。


 もちろん登場人物は皆若い。


 僕はこの作品に自分と奈々のことをオーバーラップさせようと思っていた。


 自分が今出来るのは、彼女に対する想いを募らせることであり、同時にそれを文章化することであると思いながら……。
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