砂に書いたアイラブユー
 僕は作品の中で愛を紡ぎ出していた。

 
 奈々との思い出が決して色褪せることのないよう、しっかり心に留めておくという意味で……。


 そして二〇〇九年も明け、新しい年が訪れた。
 

 公募していた文芸賞は一月末日で締め切りとなったので、僕はそれを見計らって、<スイートデイズ>を書き進める。


 淡々とした毎日が続いていく。


 別にこれといった変化のない日常が……。


 だが、実際こっちの方がいいのである。


 自分が作品を書くという観点からは充実しているのだから……。


 寒い季節が終わり、春はもうすぐそこまで来ている。
 

 そして新年度となり、すでに卒論を出し終えていた奈々は相変わらず、図書館に通い続けていた。


 僕は思っていた。

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