砂に書いたアイラブユー
 四月の眩(まぶ)しさを増し始めた海を見るため、僕たちは進み始めた。


 春爛漫だ。


 シャツはまだ長袖だったが、薄手で、ジーンズも履き心地のいいものにしている。


 僕たちは進み続けた。


 町の中の景色を見つめながら……。


 そしてこれから見られるであろう海の輝きを想像しながら……。


 僕も奈々も漕ぎ続ける。


 僕は軽い疲労感を覚えていた。


 ほんの数日前、スイートデイズを脱稿し、それを大手の出版社が主催する賞に送ったばかりで。


 僕たちは並んでツーリングしながら、町の中の景色を見続ける。


 色付き始めていた。


 町のあちこちで春の訪れを表すような光景を見つめながら、僕たちは寛ぐ。

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