砂に書いたアイラブユー
 時間はたくさんある。


「こうしてたかった」


 奈々がそう言い、僕の顔を近付けて、もう一度キスした。


 その口付けだけで、心の中にあった蟠りは消え去ってしまう。


 そして僕たちはロマンチックなまでに愛情表現し続けた。


 何度も繰り返しキスする。


 時が過ぎるのも忘れて……。 


 僕たち二人は喉が渇き始めていたので、ちょうど各々砂の上に置いていたリュックからペットボトルを取り出した。


 早春なので、入れっぱなしにしていた水は冷たいままだ。


 僕も奈々も笑顔を溢し合う。


「公募の結果まだ?」


「ああ。今年七月に結果が出るよ」

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