砂に書いたアイラブユー
「手応えはある?」


「うん、まあね」


「でも駿一、仮に受賞したら、凄く忙しくなるんじゃない?」


「そうだね。専業になれる可能性が高くなるからな」


「体力もちそう?」


「ああ。君が留学から帰ってきたら、一緒に住もうな」


「うん。あたしもその新生活が楽しみなの。愛しいって思える人と一緒に生活するのがね」


「俺もそれが楽しみなんだよ。二人で一緒のベッドに眠れるからな」


 僕が頷き、奈々の手を取って波打ち際まで連れていき、砂に書いた。


 アイラブユーという文字を。


 そしてそれが押し寄せる波によって消されるまでじっと見つめていた。


 僕たち二人は手を繋ぎ、春の海を眺め続ける。


 太陽は一番高い位置まで昇った後、傾き始めていた。
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