砂に書いたアイラブユー
「私、幻夏社(げんかしゃ)日本ミステリーノベル大賞担当の坂口と申します」


 ――私に何か?


「塚原さんおめでとうございます。あなたの公募されていた作品に特別賞が授与されることが決まりました」


 ――特別賞……ですか?


「ええ。審査員の先生方の全会一致で」


 僕は最初何を言われているのか、分かっていなかった。


 ただ自分に特別賞が与えられ、それで何とか作家デビューが出来そうな――、というぐらいだ。


 そして僕はその年の八月に東京都内のホテルで開かれた授賞式に参加した。


 大賞を射止めた作家と並んで、単なる学生程度に過ぎない僕が写真を撮られる。


 新聞や文芸雑誌にも名前が載った。


 僕自身、言葉では言い表しがたい栄誉を授かったのだ。


 東京から帰ってきて、気分が落ち着いたところで、僕のところには矢継ぎ早に執筆依頼
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