あなたが触れる度に
―ドクン。
胸が疼いた。
これは、ときめきとか、
そんな可愛らしいもんじゃなくて
ずんっと胸に響く感じ。
そう。決して心地よくはない。
むしろ、苦しい。
「…菜々?どした?」
「あ、いや。何でもない。
はやく渡ろ!」
私は美紀の背中を押して、
駅へと歩き出した。
だって声をかけていたのは、
楠本さんだったから。
そんなの当たり前で
私だけじゃないのは確かで。
私じゃなくても良かったわけで…
なに、落ち込んでんだ、私。
ただ、何て言うのかな。
変な期待、してたのかな。