あなたが触れる度に
「どうして…」
「え!菜々ちゃん知り合いなの?」
「あーいや、知り合いというか…」
その時だった。
バレないように、覗いていたのに。
カウンターからこっそりと。
右端の席に座っていた楠本さんは、私と目を合わせると
ゆっくりと腰を上げた。
スラリと長い手足。
小さな顔。
そんで、イケメン。
「ちょっと!こっち来たわよ!」
篠崎さんはもう興奮気味。
私はどうすればいいかわからず、取り敢えずコーヒーカップに目を落とした。
「こんにちわ。菜々ちゃん。」
さて、どうしよう。
顔が上げられない。
「こん…にちわ。」
ちらりと見上げると、
楠本さんはにっこりと微笑んだ。