あなたが触れる度に
背の高い楠本さんの歩幅は、広い。
歩くのが遅い私は、ついていくので精一杯。
「あ、ごめん。俺歩くの速いでしょ。」
「えっ、ちが…私が遅いから…」
振り向いた楠本さんは、くすっと笑った。
「テンパりすぎだよ、菜々ちゃん。」
月に照らされた影が近づく。
「俺が、合わせる。」
今度は、優しく微笑んだ。
そんなことされたら、
言われたら、
勘違いしちゃうじゃない。
「ありがとう…ございます。」
恥ずかしくて下を向いた。