あなたが触れる度に


「…えっ?」


「目、赤いし、目の下もほんのり赤い。」


さすが美容師。
少しの変化にも気付くのは得意なようだ。


「どうした?…何かあった?」



“何かあった?”


その言葉があまりにも優しく響いて


また泣きそうになる。


私は、ぶんぶんと頭を横にふった。


「大丈夫…」


必死で笑顔を向ける。
私、上手く笑えてる?


「…わかった。行こうか。」


楠本さんもふんわり笑うと


「こっち。」


と、これから行く道を指差して
私を導いた。


―静かに思ったこと。


この道が、どこまでも続いていてほしい。


そう、静かに思った。



< 35 / 67 >

この作品をシェア

pagetop