あなたが触れる度に
「…えっ?」
「目、赤いし、目の下もほんのり赤い。」
さすが美容師。
少しの変化にも気付くのは得意なようだ。
「どうした?…何かあった?」
“何かあった?”
その言葉があまりにも優しく響いて
また泣きそうになる。
私は、ぶんぶんと頭を横にふった。
「大丈夫…」
必死で笑顔を向ける。
私、上手く笑えてる?
「…わかった。行こうか。」
楠本さんもふんわり笑うと
「こっち。」
と、これから行く道を指差して
私を導いた。
―静かに思ったこと。
この道が、どこまでも続いていてほしい。
そう、静かに思った。