あなたが触れる度に


「…カットモデル…依頼されてから…」


語尾が小さくなる。


「そっか…」


雅樹もそれ以上、追及しなかった。


「あのサロンが、あの人の店?」

「…うん。」


「そうなんだ…あーあ。」


「…?」


雅樹はごろりと体の向きを変え、天井を見上げた。


わざとらしいため息をつくと、


「俺って、運悪いな。」


そう呟いた。


「あの光景見なきゃ、上手くいってたのかな、俺たち。」


今度は、呟きじゃない。
私への訴えだった。


私は、何をどう言えばいいのかわからず、ただ雅樹の横顔を見つめてた。


「…違うって…ことだよね?」


また、この顔。


雅樹は悲しげに笑う。


「菜々…俺たち、元には戻れないな。」


「……っ……」






しばらくの、沈黙。




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