あなたが触れる度に


「楠本さん…?」


私も不思議に思って
楠本さんの目線の先を追った。


私も言葉を失った。


そこには、



雅樹がいたから。



「あっ…」


友達と話をして笑っていた雅樹も直ぐ様その笑顔を失い、楠本さんを見た。


「ごめん。先行ってて?」


雅樹は友達を促し、
私たちのほうへ足を向けた。


友達は不思議そうに楠本さんを見たあと、後ろにいた私を見て目を開いた。


たぶん、いや確実に、
私と雅樹が付き合っていたことを知っているから、驚いたんだろう。


そりゃそうだ。
もう次の男?て顔してる。



雅樹は慌てることなく、
ゆっくりと私たちに近づいた。


顔は上げない。
決して上げてはくれなかった。




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