あなたが触れる度に
「場所、変えません?」
「えっ?」
「ここじゃあ、話にくいでしょ?」
「あ、ああ。そうだな。」
「菜々も、一緒に。」
あまりにも優しく微笑むから、
胸をギュッと掴まれたみたいに
苦しくなった。
「菜々」と呼ぶ雅樹が、
なんだか遠く感じた。
私たちが行き着いたのは、
学校のすぐ近くにあるカフェだった。
ここは…
「よく、待ち合わせしたよね。」
「…えっ…?」
「俺が授業が終わらないとき、待ち合わせしただろ?」
「あ、うん。」
私の言おうとしたことを見透かしたように発した言葉に、
私よりも、隣にいた楠本さんが反応した気がした。
店員に席を案内され、
私たちは腰掛けた。