あなたが触れる度に


辿り着いたのは、前に楠本さんが連れてきてくれたバイト近くの
『隠れ家』。


ここは本当に都会とかけ離れていて落ち着く。


今の私たちには必要だった。
何よりも必要な気がした。


「菜々ちゃん、ごめんな…」


「…えっ…?」


「俺のせいで、こんなことになって…俺が現われなければ…」


「違う!」


楠本さんの言葉を遮るように発した言葉は思いの外大きく、


楠本さんは少しびっくりしたように眉を上げた。


「…違うんです。楠本さんが悪いとかじゃなくて、楠本さんと出会ってはっきりしたんです…」


「はっきり…した?」


「はい。自分の気持ちが、はっきりしたんです。
雅樹に対しての気持ちが。」


楠本さんの目を見ることがなんとなく苦しくなった私は、
地面に目を落とした。



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