あなたが触れる度に

「雅樹が、私を好きなことが当たり前で、好かれてるのが当然で、私は求めてばっかりで…


だから…私の『好き』て気持ちは最初から…」


そう言った途端に涙が溢れた。



私は本当にどうしようもない女だと思った。


初めてだった。
あんなに私のことを好きだと思ってくれて、言ってくれて…


私、舞い上がってただけだったのかな。
それを、好きだと勘違いしてたのかな。


楠本さんに出会って、
『好き』ってどういうことか
わかってしまったんだ。


『好き』が、
どれほど辛いものなのかも。



「泣かないで。」


そう言って楠本さんは私を抱き締めた。


こんな罪ある女を抱き締めてくれる人がいるのは、奇跡としか言いようがない。


「…ごめん…なさい…」


誰に言っているのかは、わからない。


雅樹？それとも楠本さん？


両方当てはまる気がした。