天使になれなかった。
Sホテル前につくと、小太りの中年親父がハンカチで額の汗をぬぐいながら立っていた。
右手には黄色の紙袋……
あたしが親父の目の前に立つと、親父は一瞬怯むような表情をみせたがすぐに脂ぎった顔でニヤリと下品な笑顔をみせた。
「思ってたよりずっと可愛い子でよかった。華奢で色白で長い黒髪……好みだな」
あたしは何も言わない。
「さぁ…いこうか」
そう言って涎をすする親父はあたしの肩を抱いて嫌らしい笑顔を浮かべたままホテルのなかへ進んでいった。