天使になれなかった。
しばらくジッとまっていると、退屈してきた頃にハゲ親父と女がでてきた。
思わず欠伸がひっこむ。
女をみるハゲ親父は、あたしを貪る親父たちと同じ目をしていた。
こいつも同類か……
女の耳元で何かを囁いてふたりは別れた。
ハゲ親父は何も知らずに呑気な顔でこちらに歩いてくる。
そしてついに曲がり角であたしたちと鉢合わせ。
───ご対面。
「あなた川本弁護士ですよね?」
蓮見はにっこりと微笑みながら、ハゲ親父が通り過ぎようとしたところに声をかけた。
ハゲ親父の足取りがとまる。
振り向いたその顔は不意をつかれたせいか動揺を隠しきれていない。